天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ
著者: 北野 唯我
発刊:2019-01-17
カテゴリマネジメント
対象読者管理職
章の構成
- まえがき
- ステージ1 才能って何だろう
- ステージ2 相反する才能
- ステージ3 武器を選び、戦え
- あとがき
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書評
天才ビジネスマンが活躍できない組織とは?イノベーションに必要な天才ビジネスマンを活かす方法とは?
本書の著者は、以前に話題の書となった「このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法」と同じ、北野唯我氏である。
前著の『転職の思考法』同様、物語調で話は進んでいき、今回の主な登場人物は、凡人広報担当の「青野」と、なぜか蘇った忠犬ハチ公の「ケン」、天才経営者の「上納」、秀才型サラリーマンで青野の同期である「横田」が、様々な対話を繰り返しながら話は進んでいく。
天才経営者上納が創業した会社で働く青野は、上納の才能に惹かれ、この会社に入社する。しかし経営は行き詰まり、社内外からの上納批判が噴出するようになるが、青野は凡人広報としてなんとか上納の経営を支えたいと奔走する。
著者の北野氏は、世のビジネスマンを天才・秀才・凡人の3種に分けられる、と主張する。
天才は創造性を得意とし、秀才は再現性を得意とし、凡人は共感性を得意とする。これだけ世の人をうまく抽象化できる著者の能力は、類い稀ない才能だと感じる。
本書では、青野が試行錯誤を繰り返していく中で、天才・秀才・凡人がそれぞれどのような働きをするのか、どのようにして、天才型ビジネスマンが、秀才・凡人ビジネスマンに殺されていくのか、また天才ビジネスマンをどのように生かしていくべきなのかを、会社再建のストーリー中で具体的な描写と共に説明していく。
ちょうど私が本書を読んだ前日に、Yahoo!によるzozotown買収・前社長前澤氏の退任のニュースが流れ、まさに本書の内容そのものではないか、と感じた。
もちろん今回の退任劇については、天才が凡人に殺された、というものとは少し異なる。本書にも記載されている、企業の成長フェーズに合わせた「天才型経営者」から「秀才型経営者」へ、という経営には必須の世代交代である。
大きな驚きを呼んだ退任劇であったが、本書を読むことで、あの買収は筋の通ったものであったと、納得がいった。天才・秀才・凡人にはそれぞれ果たすべき役割がある、ということであり、それと異なるポジションでは力を発揮することができない、ということである。
本書で他にも面白いと持ったのは、一人の人の中に天才・秀才・凡人がいる、ということである。
大多数の人は自分の中の天才を、自分の中の秀才・凡人が殺してしまっている、というのだ。
確かに、思いついたことがあっても、翌日には「うまく行かなそう」「ネガティブなフィードバックが返ってくるのが怖い」とやめてしまうこともある。そのストッパーを外すことで、自分の中の天才を伸ばしていくこともできるというのだ。
自分が何タイプのビジネスマンなのか、また上司や部下、同僚が何タイプのビジネスマンなのかを理解しておくことで、より自分が組織で活躍するにはどうすればいいのか、上司や部下を上手に扱うにはどのように振る舞うべきなのか、ということがわかってくる。そういった意識を持って仕事に臨むことで、より組織の発展を目指すことができるようになるのであろう。