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プロジェクトの失敗はだれのせい? ~紛争解決特別法務室“トッポ―"中林麻衣の事件簿

著者:細川 義洋
発刊:2016-02-26
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対象読者ディレクター

書評

システム開発を成功に導くにはどうすれば良いのか?

「システム開発案件の成功率は7割」と良く言われている。私自身、実際にWeb制作業界に身を置く人間としては、システム・ウェブサイトの受託開発の難しさというのは毎日身をもって感じている。

仕様変更に次ぐ仕様変更…それでも納期・予算は変更できない…。
クライアントが全てベンダー(開発会社)任せで非協力的…。
追加予算を交渉してもそれはベンダーの責任だからと受け入れてもらえない…。

システム開発の失敗の原因には様々ある。しかし、多くの原因は上記のような状態から、ベンダーが無理やり開発を進め、リリース間際になり「納期が間に合わない」、リリースしてからも「バグだらけで使えない」という状態になり訴訟に発展する、と言うことが多いように感じる。
ベンダー側は「クライアントが非協力的だから」と主張し、クライアント側は「ベンダーがうまくリードしてくれないから」と主張する。どちらの言い分も非常に納得できるものである。
いったいなぜシステム開発の案件は、ここまで失敗することが多いのであろうか。

本書では、そういったシステム開発の失敗の原因と対策を解説してくれる内容になっている。プロジェクトマネージャーやディレクターとしてシステム開発を担当する方にオススメの内容だ。
システム開発の失敗のあるあるを小説形式で描いているため、IT業界以外に人が見ても非常に分かりやすく、トラブルの内容なども頭に入りやすくなっている。
筆者は東京地方裁判所で民事調停委員・IT専門委員として、数々のIT訴訟を見てきた細川義洋氏が務め、実際にIT訴訟を見てきた筆者だからこそ描けるリアルな内容になっており、純粋に物語として読んでも面白い内容だ。

本書は、大手IT企業の「トッポー」こと特別法務室の主人公 中林麻衣とその上司 野々村浩一を中心に話は進められていく。様々なシステム開発案件のトラブル対応を通して、プロジェクトマネージャーがどのようにして対処すべきだったのか、ということを解説していく形で話は進められる。
実際の過去の判例も合わせて書かれているため、ベンダー・クライアントが果たすべきとされている役割もわかりやすく解説されている。

最後には各トラブルの詳細の解説も用意されているため、法律や対策など必要な知識・ノウハウを体系的に整理することができるようになっており、そこだけを見返せば必要な情報は得られるよう工夫されている。

読んでいて感じたのは、改めてシステム開発のプロジェクトマネジメントがいかに難しいことであるか、と同時に、ベンダーとクライアントがやるべきことをしっかりやれば、そこまで大きな問題に発展することはないのだ、という至極当たり前のことである。
ベンダーはIT技術については専門家で知識も豊富にあるが、かと行ってクライアント企業の業界については素人である場合が多いため、知らないことが多い。ベンダーはクライアントの顔色ばかり伺うのではなく、言いにくいことでも言うべきことをしっかり伝えていく、と言うことを改めて徹底しなければならないのだと思う。

章の構成

  • 第一話 ユーザーのワガママはベンダーの責任?
  • 第二話 ユーザーが協力しないのもベンダーのせい?
  • 第三話 苦しいときには縦社会
  • 第四話 業界の“常識"は見えない要件
  • 第五話 軽微な不具合に地雷は潜む
  • 第六話 悪い話こそエスカレーション
  • 第七話 プロジェクトのやめ方は泥棒に学べ
  • 第八話 隠しごとが孤独と不幸を生む
  • 第九話 真のパートナーたれ
  • 解説

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