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なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?―小さな力で大きく動かす!システム思考の上手な使い方

著者:枝廣 淳子、小田 理一郎
発刊:2007-03-01
カテゴリ自己啓発
対象読者新入社員

書評

ものごとの本質を理解し、小さな力で大きな効果を得る「システム思考」を学ぶ

転職先の推奨書籍として紹介されていたので読んでみた。

本書のタイトルでも使われている「システム思考」とはいったいなんなのか。
システム思考とは、目先の問題を見て対症療法を行うのではなく、本質を見極めてどこに介入すればより大きな改善が得られるのかを考えるための思考法のことである。
対症療法ではその場限りでうまくいっても、数年後にはまた同じもしくはそれ以上の問題が発生してしまい、結局のところ得られた効果に対して、大きなコストがかかってしまう。
それに対して本質を見極めて、根本を改善することで、より少ないコストで大きな効果を得ようというのが、システム思考という考え方である。

ではその「システム思考」をするためにはどうすればいいのか。
本書ではシステム思考をするための最善の方法の一つが「ループ図」を書くことだという。
各事象に対しての各効果のループを図解することで、視覚的に物事を理解し、本質を見極める助けになる。そうして問題の本質を理解すれば、レバレッジポイント(大きな効果を得られる介入ポイント)が発見できるようになる。

例えば、有名な話ではあるが、犯罪都市として有名であった1980年代ニューヨークにおいて、犯罪を減らすために当時の市長がとった行動は、地下鉄の落書きを消す、ということであった。
地下鉄の落書きを無くしても、凶悪事件とは一見関係なさそうに思えるが、その後ニューヨークにおける犯罪は激減した。
これは割れ窓理論と呼ばれ、窓ガラスが割れたまま放置されている地域は、犯罪が増加するというもので、落書きをなくすことで「犯罪をしてはいけない」という人間の深層心理に訴えかけ、犯罪数の減少に大きく貢献した。

このようにシステム思考を使った有効な働きかけはしばしば直感に反するものであるが、問題の構造を理解して、正しく介入することで、大きな効果を得ることができるようになる。
これはビジネスの世界においても有用なため、ぜひ習得しておきたい思考法である。

結局のところは「問題解決の際は、目の前の事象にとらわれることなく物事の本質を理解し、正しい解決策を実行せよ」ということであり、ある程度経験を積んだビジネスマンであれば、無意識的にやっていることなのかと思われる。 ただ、それを改めて「システム思考」として言語化して体系的に理解する、ということは価値のあることだと思った。

システム思考に慣れていくには、まずはループ図を作ることを習慣化することだという。ループ図をたくさん書くことで、事象発生の構造が理解できるようになり、問題のボトルネックがわかるようになる。
「ますます」「いっそう」などのキーワードが出た際はループが発生している証拠である。まずは頭の中でイメージするだけでもいいので、ループ図を作成するようにして、システム思考を身につけていきたいと思う。

章の構成

  • 小さな力で大きく動かそう!
  • システム思考とは何か?―よいパターンを創り出す究極のツール
  • システム思考は難しくない!―世の中はシステムだらけです
  • 「時系列変化パターングラフ」が望ましい変化を創り出す
  • 最強ツール「ループ図」を使えば構造が見えてくる!
  • 強力な助っ人「システム原型」で現実の構造を見破る
  • 絶妙のツボ「レバレッジ・ポイント」を探せ!―小さな力で大きく変える
  • いざ、問題解決へ!―望ましい変化を創り出す
  • システム思考の効用と実践手法―こんな場面で役に立つ!
  • 最強の組織をつくる!―変化の時代に必須のコンピテンシー
  • システム思考を使いこなすコツ―実践のための七ヶ条
  • システム思考をより深く知りたい人のために―システムの特徴

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