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革命のファンファーレ 現代のお金と広告

著者:西野 亮廣
発刊:2017-10-04
カテゴリマーケティング
対象読者マーケター

書評

インターネット時代の広告の本質とは。

本書の著者は、人気お笑いコンビ キングコングの西野亮廣氏。
巷では炎上芸人とも呼ばれるほど、頻繁にブログが炎上している。
それもあってか、この人の名前を見ない日は少ない気がする。2ちゃんねる、Twitter、LINEのタイムライン、Yahoo!ニュース…。
毎日どこかで見ているような印象がある。

本書を読んで一番に感じたことは、この人は広告の本質を突いている、ということである。
特に印象に残っているのは「自分の時間を使うな。他人の時間を使え。」という言葉。いかに少ない資本で、大きな効果を得るか。広告の基本である。

毎日この人の名前を見ている気がする。私がまさにそういう印象を抱いていたように、筆者はいかにして自分の時間・お金を使うことなく、自分の存在を認知してもらうか、ということを考えて動いている。
目立つ言動をすることで、ニュースに取り上げてもらい、賛否両論を巻き起こす。本人がいないところで、たくさんの人や番組、記事が話題にするから、その言動は一気に広まる。

世間には炎上商法・炎上マーケティングと呼ばれる、多くの批判を集中的に浴びることで、知名度を上げようとする手法がある。
西野氏も世間からは、目立った言動は炎上商法だと批判されている一面もある。

しかし西野氏の言動を、安易に炎上商法と呼ぶべきでは無い。
彼の言動は常に賛否両論を呼ぶ。批判だけでなく、彼の発言には賛成意見も多数集まる。それはやはり、彼の考えの多くが論理的であり、筋が通っているからであろう。
(そしていい感じに批判派を盛り上げて議論を呼び起こす。実にうまい。)

特に大きな注目を浴びたのが、本書にも詳しく書かれているが「えんとつ町のプペル」という絵本を、ネットで無料公開したことである。
世間からは「そんなことをすれば、クリエイターにお金が入らなくなる」と言う批判が殺到した。
しかし、そこにはインターネット時代における勝ち筋が描かれていた。

インターネット時代にはフリーミアムモデルと呼ばれる、ビジネスモデルが非常に多い。
これは、最初は無料で利用できるが一定以上の機能が欲しい人は課金をする必要がある、と言うものである。

彼は、「えんとつ町のプペル」のターゲットを分析し、このフリーミアムモデルを組み合わせることで、大きく売り上げを伸ばせると考えた。
その結果、えんとつ町のプペルは30万部を突破する、という大ヒットを遂げた。
当初、クリエイターにお金が入らなくなる、と言う批判が多かったが、結果としてクリエイターに多くのお金が入ったのであった。

どれだけ自分で、絶対にいける、と思っていても従来の常識に反するマーケティングというのはそう簡単に踏み切れるものでは無い。
私自身、よくあるマーケティング手法ばかり安易に取り組もうとしてしまう。
しかし本書を読むことで、従来の常識の枠に収まらない考え方がマーケティングには必要なのである、と痛感した。
いかに自分の資本を使わずに、広めることができるか。マネタイズポイントをどこに設定するか。

インターネットは私たちの生活を激変させた。
だからこそ、西野氏のような柔軟な考えで臨めば、少ない力で大きな効果を得ることができる。
常に常識にとらわれない考えを持っておきたいと思わせる一冊。ぜひマーケターの皆さんには読んでいただきたい。

章の構成

  • はじめに
  • 他人と競った時点で負け。自分だけの競技を創れ。
  • キミの才能を殺したくなければ、お金の正体を正確に捉えろ。
  • お金を稼ぐな。信用を稼げ。「信用持ち」は現代の錬金術師だ。
  • 意思決定の舵は「脳」ではなく、「環境」が握っている。
  • 入り口でお金を撮るな。マネタイズのタイミングを後ろにズラして、可能性を増やせ。
  • 作品の販売を他人に委ねるな。それは作品の「育児放棄」だ。
  • インターネットが破壊したものを正確に捉え、売り方を考えろ。
  • 2017年1月。お金の奴隷解放宣言。
  • 無料公開を批判する人に未来はない。
  • 過去の常識にしがみつくな。その船は、もう沈む。逃げろ。
  • ネタバレを恐れるな。人は「確認作業」でしか動かない。
  • 作品の無料化が進み、エンタメ業界は完全な実力社会になる。
  • その作品を守る為に、「著作権」は本当に必要か?
  • 本を売りたければ、自分で1万冊買え。そこで必要なのは「財力」ではない。「努力」だ。
  • 「セカンドクリエイター」を味方につけろ。
  • 信用時代の宣伝は、口コミが最強。口コミをデザインしろ。
  • 自分の作品と、社会を一体化させろ。
  • 努力量が足りていない努力は努力ではない。誤った努力もまた努力ではない。
  • ニュースを出すな。ニュースになれ。自分の時間を使うな。他人の時間を使え。
  • お客さんは、お金を持っていないわけではなく、お金を出す「キッカケ」がないだけだ。
  • インターネットは「上下関係」を破壊し、「水平関係」を作る。
  • 《後悔の可能性》を片っ端から潰せ。
  • 老いていくことは「衰え」ではない。「成長」だ。
  • 次の時代を獲るのは「信用持ち」だ。
  • 本ではなく、店主の信用を売る古本屋、『しるし書店』。
  • 売れない作品は存在しない。キミの作品が売れないのは、キミが「売ってない」だけだ。
  • 出版のハードルを下げ、国民全員を作家にする出版サービス『おとぎ出版』。
  • 踏み出す勇気は要らない。必要なのは「情報」だ。
  • おわりに

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