プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか
著者:P・F. ドラッカー
発刊:2000-07-01
カテゴリ自己啓発
対象読者その他
章の構成
- 1 いま世界に何が起こっているか
- 2 働くことの意味が変わった
- 3 自らをマネジメントする
- 4 意思決定のための基礎知識
- 5 自己実現への挑戦
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書評
これからの知識労働者に必要なプロフェッショナルな仕事術とは。
数年前、社会学者であり経営学者でもあるP.F.ドラッカーの唱えたマネジメントに関するビジネス書が大ブームとなった事がある。その流行は、ドラッカーのマネジメント論自体の解説書や、彼のマネジメント論を高校野球部のマネージャーが実践するとどうなるかというものかといった、二次制作的なものまで生みだした。この本『プロフェッショナルの条件 いかに成果をあげ、成長するか』も、ドラッカーが記した本のひとつだ。この本の大きな特徴のひとつは、経営者ではなく、労働者の視点から書かれたビジネス書であるところだ。
あたりまえの話ではあるが、知識労働者の中では、経営者よりも労働者の方が多い。また、経営者もまた労働者としての側面を持つものだ。ドラッカーが記した数ある書籍の中で、実際の需要がもっとも高いのは、実はこの本なのではないだろうか。
「知識労働者の数は増え、新しい社会構造が生み出されている現代」
本書のメインテーマは、プロフェッショナルな仕事術についてである。しかし、なぜプロフェッショナルである必要があるのか、この考察が実に深い。この点は社会学者であるドラッカーの本領が発揮されている部分だ。
この本では、現在の知識労働者の数の多さが数字であらわされる。20世紀のはじめには、知識労働者の数が人口の3パーセント以上となる国はなかったが、現在のアメリカでは40パーセントが知識労働者である、という具合である。そして、現在の知識労働者と(会社)組織の関係がついで説明される。この部分は、分析における解釈という要素をふくんでいるために、ドラッカーの説が正しいかどうかは、なんとも言えない。しかし、知識労働者と組織の関係はゆるく、そのようなゆるい状況では個々人がプロフェッショナルな能力を持つ事が、個人の生き残る有効な手段であるとする点は、異論の余地がない。本書でドラッカーがプロフェッショナルである事を説く理由は、ここである。この考察は、ビジネスマンがこれからの自分の人生のありかたを考えるにあたっても、とても参考になるだろう。
「プロフェッショナルとなるために適用される、自己マネジメント」
そして、ドラッカーが提唱する仕事術としての、自己マネジメントが詳細に書かれる。本書の主題を「プロフェッショナルの条件」に絞るなら、全5章からなる本書のうち、3章「自らをマネジメントする」からが本論となる。本論として、ドラッカーが強調する事は、以下の3点である。
1. みずからの強みを知ること
2. 時間を管理すること
3. もっとも重要な事に集中すること
それぞれに、具体的な方法が書かれている。たとえば、みずからの強みを知るために、ドラッカーはフィードバック分析という方法を推奨する。何かをしたら、そこに何を期待するかを書きとめ、9か月後、1年後という一定のスパンで、期待と実際を照合する。こうする事で、自分の強みが明らかになる、こういうわけである。
現代の知識労働者と組織の関係は、もろい。かつてのように、いちど就職したら終身雇用されて安泰という事は、まず期待できない。だから、プロフェッショナルな能力を持たないものは厳しい。逆に、プロフェッショナルであるものは、ある組織が解体しても、簡単に次の組織で活躍することが出来る。
本書は、プロフェッショナルな仕事術を示したビジネス書であるであると同時に、これからの知識労働者の人生のありかたをも示したものでもある。