価値創造の思考法
著者:小阪 裕司
発刊:2012-10-26
カテゴリマーケティング
対象読者マーケター
章の構成
- 第1章 新しい消費と見えざるシステム
- 第2章 なぜ、価値創造がいつまでも「実現」できないのか
- 第3章 今ある商品をよみがえらせる方法
- 第4章 お客さんの“充実の旅"を計画する
- 第5章 顧客を「絆顧客」と「応援者」にする
- 第6章 こうして未来の収益と失う危機を予測する
- 第7章 「ひと」を軸にしたビジネスと社会の「実現」へ向けて
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書評
「あなたからこの商品を買いたい」と思わせるには
この本の著者である小阪裕司氏は、「ワクワク系マーケティング実践会」という会を主宰していることでも有名である。会員は全国の企業や店舗1,600社あまりあると言われており、その業種も多種多様である。
「ワクワク系マーケティング」という会の名前もさることながら、GQ JAPANで日本のトップマーケッターに選出された神田昌典氏とは盟友であることから、小阪裕司氏へも“マーケッター”“経営コンサルタント”と認識して、氏の著書を読まれる方も多い。
しかし、これは間違いである。
小阪裕司氏はマーケッターでも経営コンサルタントでもない。情報学の博士であり、日本感性工学会の理事であり、大学数校の客員教授なのである。さらにわかりやすくいうと、“人はなぜ行動を起こすか”といったことを脳科学的側面や心理学的側面などからアプローチしている研究者なのである。
小阪裕司氏の著書は、人(消費者)がどのような局面でどんな感情や行動を生み出すかをまとめたものが中心であり、商売繁盛で重要なことは、売り手が顧客へ商品やサービスの価値をきちんと伝える「動機づけ」と売り手と顧客が絆を強め、時に顧客が売り手を応援してしまう「関係づくり」の二軸だと常々述べている。
この『価値創造の思考法』は、その中でも「動機づけ」に特に焦点を絞り、詳しく解説されている。
今、様々な企業間で「モノが売れない」と叫ばれている。そして、企業内では目標数字の達成に躍起になってしまっているところが多い。しかし、小阪裕司氏はこうした事象にこそ、モノが売れない理由が隠されていると述べている。
「売上が上がる」というのは、ある日突然自然にモノが売れてゆき、数字という目に見えない幻想を企業にもたらしてくれるものだろうか?答えは当然NOだが、このように考えてしまっている経営陣や現場責任者は意外なほど多いという。
売上が上がるためには、人が買うという行動を起こさない限りは絶対に起きることはない。さらに、人は理由がなければ行動しない生き物であるから、何かによって「動機づけ」されなければ顧客はモノを買わないと、小阪裕司氏はこの本でも述べている。
また、商品やサービスを提供する側は、売上が上がらないと「なぜ商品が売れないのか?人が買わない理由とは何か?」を探求してしまうと言う。
しかし、顧客にとってそのほとんどが「買わない理由がある」のではなく、「買う理由がない」のである。この2つは一見似ているようであるが、まったくもって考え方が違う。仮に同じような経営環境であったとしても、1社は「買わない理由」を列挙し、方針を定め対策をねり、もう1社は「何をすれば人は買うという行動をとってくれるのか」を考え、対策を立てたとするとどうなるか? 目の前に起きた初めの売上現象は同じであっても、考える視点が違えば、おのずと結果も変わってくるのである。
この『価値創造の思考法』は、あらゆる業種で応用できる考え方が述べられており、商売の原理原則が詳しく書かれているため、役職等の立場などは関係なく、広くビジネスマン必読の書としておすすめの1冊である。