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道をひらく

著者:松下 幸之助
発刊:1968-05-01
カテゴリ経営・起業
対象読者経営者・起業家

書評

日本を代表する経営者が何を考え何を大事にしていたのか

全世界ですでに500万部以上発行されているビジネス書で代表的なものといえば、私にとっては松下幸之助の「道を開く」が思い浮かぶ。
本書を読むことで世界の普遍の原理、企業にとっての経営理念の意義、そしてビジネスで行き詰まった際のアドバイスとして活用することができる。

今の若いビジネスマンは松下幸之助が誰なのかを知らないかもしれない。
知らない人のために説明しておくと、松下幸之助は松下電器産業株式会社(現パナソニック)を育て上げた昭和の大経営者である。
和歌山から大阪に丁稚奉公に出てきて、電気の将来に目をつけ、20代前半で起業創業。その後、戦前戦後の苦難を切り抜けて、パナソニックを世界でも類い稀な大企業に育て上げたのである。

昭和の経営者の考え方など今の時代に合わないのでビジネス書として読む価値はないと考える方々もいるかもしれない。
しかし、ビジネスには普遍の原理、考え方があり、そこを追及して考えてきたのが松下幸之助である(いわゆる幸之助イズムである。)、ということがよくわかる1冊だ。

いくつか私が注目した内容を紹介しようと思う。

まずは「素直な心」の大切さについて。
素直とは正直なことと勘違いされやすいが、実はそうではない。すべての物事をあるがままに見つめ、先入観を持たずに考えることで正しい判断ができるということである。
経営者のように重要な判断を求められる場合、その判断はすべての物事をあるがままに見つめて判断しなければ、失敗してしまうということである。
いくつかの具体的エピソードを交えて、素直な心の大切さを紹介している。

次に、経営理念の大切さ、企業はなぜ存在するかということ。
非常にかたい言葉であるが「企業は社会の公器」という考え方である。事実、あらゆる平成の大経営者も松下幸之助の考え方に同調しているがその中でももっとも受け入れられてるのがこの考え方である。
経営者たるもの、なぜそのビジネスを展開するのかと思い立った時に、「お客様のお役に立っているか」「世のなかの発展につながっているか」といったところをまず考えるべきである。これがなければ、ビジネスを行う意味がないと考えている。

また、「雨が降れば傘をさす」。これも普遍の原理として受け入れられている。要するに当たり前のことを当たり前に行うこと、それこそが重要だということ。
奇をてらった経営は一時的にはよいかもしれないが、決して長い成功にはむずびつかないということである。
この原理は今後も業界、業種をこえてあてはまるだろう。

このように、松下幸之助の経営に関する考え方の多くは時代を超えて通用するものであり、それらの考え方をわかりやすい言葉、エピソードで紹介しているのがこの「道を開く」である。
随筆調でさまざまなわかりやすいエピソードで紹介してあるだけに読みやすく、手元において常に読み返していきたいビジネス書の代表として時代を超えて推奨したい1冊である。

章の構成

  • まえがき
  • ●運命を切りひらくために
  • ●日々を新鮮な心で迎えるために
  • ●ともによりよく生きるために
  • ●みずから決断を下すときに
  • ●困難にぶつかったときに
  • ●自信を失ったときに
  • ●仕事をより向上させるために
  • ●事業をよりよく伸ばすために
  • ●自主独立の信念をもつために
  • ●国の道をひらくために

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