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我が逃走

著者:家入一真
発刊:2015-05-27
カテゴリ経営・起業
対象読者経営者・起業家

書評

上場で手にした10億円を数年で使い果たし無一文に。成功と挫折を味わった経営者の人生とは

現在クラウドファンディングが大きな注目を集めている。クラウドファンディング事業を手掛ける会社で、日本で最も有名な会社の一つが本書の著者である家入一真氏が代表を務めるCAMPFIREである。家入一真氏はこれまでクラウドファンディング事業以外にもレンタルサーバー事業やネットショップシステム事業、飲食店運営事業等幅広い事業を手掛けてきている経営者である。
レンタルサーバー事業では日本を代表するIT企業GMOインターネット株式会社へ売却、JASDAQへの当時史上最年少上場を果たすなど、経営者として大きな成功を掴んできた。経営者としての成功の詳細については別著「こんな僕でも社長になれた」に詳しく記載されている。

本書は「こんな僕でも社長になれた」以降の話である。「こんな僕でも社長になれた」では家入一真氏の幼少期からレンタルサーバー事業であるロリポップ!の創業・株式会社paperboy & co(ペパボ)の上場までが詳しく描かれており、「引きこもりが上場企業の経営者になる」という成功ストーリーが主な内容であった。
そして本書「我が逃走」はそれ以降の転落人生が主な内容であり、その後の再復帰、都知事選出馬、そして現在という内容で描かれている。

本書は「こんな僕でも社長になれた」同様、家入氏の人柄の良さが伝わってくる一冊である。

ITベンチャー企業の社長といえば一発成功を狙うギラギラしたイメージが強いが、家入氏は真逆である。元引きこもりで、あまりグイグイ組織を引っ張って行くタイプではない。だからこそ、本文中にも出てくるが「ケンタロ」こと副社長(現社長)を筆頭に、社員がしっかりと会社を引っ張って行く組織が出来上がっていたようだ。ある種理想の経営者像とも言えるだろう。

しかしそんな家入氏が社員の再三にわたる忠告を無視して、事業に失敗する。ここから家入氏の転落人生が始まることとなる。詳しくは本書に譲ろうと思うが、事業の失敗や毎晩の散財により、家入氏はその後財産のほぼ全てを失うことになる。

株式会社ペパボの上場によりおそらく数十億の資産を手にしていた家入氏は、いわばほんの一握りとされる成功者であった。その成功者がたかだか数年で無一文になるのである。これだけの急上昇と急降下を味わった人間は他にいないのではないだろうか。

その後都知事選出馬での善戦やシェアハウス「リバ邸」の立ち上げ、クラウドファンディング会社「CAMPFIRE」立ち上げと、様々な分野において再び注目を浴びている家入氏だが、その根底にあるのは「すべての人に居場所を提供したい」という想いであった。

引きこもりや事業失敗、離婚など、多くの挫折を味わってきた家入氏。成功と挫折の両方を味わった家入氏だからこそ書ける内容が詰まっている。

純粋に読み物としても面白いため、ドキュメンタリー小説として読んでも入り込めてしまう一冊。

章の構成

  • プロローグ
  • 第1章 こんな僕でも社長になれて
  • 第2章上場に向かって
  • 第3章 カフェ経営者へ
  • 第4章決壊
  • 第5章逃走とリハビリの日々
  • 第6章 「やさしいかくめい」の始まり
  • 第7章都知事選、そして新しい「居場所」へ
  • あとがき

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