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人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊

著者:井上 智洋
発刊:2016-07-21
カテゴリテクノロジー
対象読者その他

書評

人口知能の発達によるマクロ経済への影響を紐解く。

インターネットの発達により、人工知能(ai)が人間の仕事を奪う、とあちこちで叫ばれている。故に、人工知能についての書籍や、今後どういったスキルを身につけていけば良いか、という自己啓発本は巷に溢れている。
この本もその一種だろうか。実はあまり期待をせずに購入した。

ただ、「2017新書大賞」に選ばれた本、ということもありどういった内容なのかはかねてより気になっていた。

本書の著者は井上智洋氏。聞いたことがない、という方が大半ではなかろうか。私自身もそうであった。井上智洋氏はマクロ経済学を専門とする経済学者である。IT企業経営者の書く人工知能本は数多く読んできたが、経済学者の人工知能本を読むのは初めてであった。

本書は著者がマクロ経済学者ということもあり、人工知能とマクロ経済についての関係性についての分析が主な内容になっており、そういった点が他の人工知能の本と大きく異なる点である。個人としてどのようなスキルを身につければいいのか、という内容も含まれてはいるが、経済成長、失業率の推移、政府としてどのような政策をしていくべきか、などあくまでマクロな視点での経済に、人工知能がどのような影響を与えるか、という内容がメインで、アプローチが新しい。

例えば、第4章では人工知能が人間の雇用を奪った後社会全体としてはどのようになっているか、ということが書かれている。2045年には、人間は資本家として高収入を得ている1割とそれ以外の無職9割になっているというディストピアが訪れる可能性がある、と筆者は指摘する。
そしてその解決には政府がベーシックインカムを導入することが必要である、と筆者は主張する。

それらの主張に対しても筆者は経済学者らしく、経済学の理論を用いて論理的に明快に内容が進んでいく。

「仕事を奪われないためにスキルを身につけよう」という論理の本は多い。しかし実際人工知能の発達によってはほぼ全ての仕事が奪われてしまう、という可能性もあり、その後社会はどうなっていくのか、ということを分析する書籍はこれまでであったことがなかった。そういった意味で他の書籍では言及できていない事柄まで、分析をしている本で非常に学びが多い本である。

直接的・喫緊的に自分のスキルとして活きる、という本ではないかもしれないが、長期的な世の中の動きを掴むには非常に良書と言えるだろう。

章の構成

  • 第1章 人類vs.機械
  • 第2章 人工知能はどのように進化するか?
  • 第3章 イノベーション・経済成長・技術的失業
  • 第4章 第二の大分岐──第四次産業革命後の経済
  • 第5章 なぜ人工知能にベーシックインカムが必要なのか?

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