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江副浩正

著者:馬場 マコト、土屋 洋
発刊:2017-12-19
カテゴリ経営・起業
対象読者経営者・起業家

書評

リクルートを創った男の壮絶な半生を描いた一冊

「リクルート」という会社名を聞いたことがない、という方はほとんどいないのではないだろうか。
本書はそのリクルートの創業者 江副浩正の壮絶な半生を描いた書籍である。

私自身、数々の企業の創業物語を読んできたが、ここまで波乱万丈な人生を歩んだ起業家も珍しい、というのが一番の感想である。
500ページにも及ぶ超大作であるが、読んでいて全く飽きないほど、江副氏の人生は壮絶に満ちたものであった。

今でこそ様々な事業を成功させている高収益企業で、日本一の「人材輩出企業」として学生からも憧れの企業とみられているリクルートであるが、江副浩正と聞いて真っ先に「リクルート事件」を思い浮かべる方も多いであろう。
それだけ人々の記憶にはこの事件のことが刻まれているということだろう。
当時の竹下内閣が総辞職に追い込まれるなど国政までをも揺るがした、戦後最大の贈収賄事件である。

その、江副浩正の実像を明らかにすることが本書の目的である。

最終的には執行猶予付きの有罪判決を受けた江副であったが、その真相は如何なものであったのか、本書に記されている。

また「自ら機会を創り出し、機械によって自らを変えよ」という社訓にも代表されるように、リクルートという会社は非常に社員の士気の高い会社としても有名である。
その社風がどのようにして生み出されたのか、創業者のDNAがどのような形で残っているのかは、経営に近い立場で働いている自分としても非常に興味深いものであった。

リクルートというと、人材サービス業というイメージが強い会社であるが、それ以外にもホットペッパーやゼクシィ、じゃらん、カーセンサーなど我々の生活に密着しているメディアを多数立ち上げ、高い収益を上げている。
本書を読めばわかるが、リクルートという社のルーツが人材サービスではなく「情報サービス業」であるということがわかる。今後はネットでの情報サービスが盛んになる、ということを見越した江副氏の先見の明による功績である。

ベンチャー起業家の草分け的存在として名を馳せた江副浩正氏。
閉塞的だった日本の就職活動を大きく変革し、日本経済の活性化に大きく貢献したことは間違い無いであろう。

江副浩正という人間の半生を知ることは、バブル崩壊後景気低迷が続く、日本経済活性化への活路を見出すことにもつながるのではないだろうか。
非常に面白く興味深い一冊!

章の構成

  • 序章 稀代の起業家
  • 第一章 東京駅東北新幹線ホーム
  • 第二章 浩正少年
  • 第三章 東京大学新聞
  • 第四章 「企業への招待」
  • 第五章 素手でのし上った男
  • 第六章 わが師ドラッカー
  • 第七章 西新橋ビル
  • 第八章 リクルートスカラシップ
  • 第九章 安比高原
  • 第十章 「住宅情報」
  • 第十一章 店頭登録
  • 第十二章 江副二号
  • 第十三章 疑惑報道
  • 第十四章 東京特捜部
  • 第十五章 盟友・亀倉雄策
  • 第十六章 リクルートイズム
  • 第十七章 裁判闘争
  • 第十八章 スペースデザイン
  • 第十九章 ラ・ヴォーチェ
  • 第二十章 終戦
  • 第二十一章 遺産

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