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フィリピンパブ嬢の社会学

著者:中島 弘象
発刊:2017-02-16
カテゴリ政治・経済
対象読者その他

書評

フィリピンパブ嬢の現状に迫る、ノンフィクション作品

タイトルからしてセンセーショナルな本書であるが、その帯に書かれた「研究対象を恋愛対象にしてしまいました…」という内容も衝撃的。表紙をみて思わず手にとってしまった。

タイトル通り本書はフィリピンパブ嬢を研究対象とした内容ではある。しかし、ただの研究論文のようなものではなく、著者が実際の体験をもとに理解したフィリピンパブ嬢の実情をドキュメンタリーとして伝えているものである。

帯に書かれている通り、著者は在学中にフィリピン人を対象とした研究を行なっていたが、その過程で研究対象であったフィリピンパブ嬢と恋に落ち、実際にそのまま結婚している。表面的なことだけでなくかなりディープな内容も語られている。

フィリピンパブについての学術的な調査はもともと少なく、謎に包まれていることも多い。

私自身、フィリピンパブには足を運んだことがなく、繁華街でフィリピン人のお姉さんがキャッチで声をかけてくるのを通り過ぎたくらいである。特に若い層はフィリピンパブを経験したことがない、という人が大半ではなかろうか。

これまで得体の知れない場所であったフィリピンパブだが、本書を読むことでフィリピンパブとはどういったものなのか、日本にきているフィリピン人は一体どういう人なのか、フィリピンがいかに貧しい状態にあるのか、といったことがわかった。

多くのフィリピンパブ嬢は日本でのビザを取得するために、日本人と偽装結婚をしているということ、フィリピンに住む多くの家族は、日本を含む海外への出稼ぎにいった家族からの送金で生活が成り立っているということなど、知らないことも多く、数多くの発見があった。

タイトルでは「社会学」という言葉が使われており、少々お堅い内容かと思われたが、実際は著者とフィリピンパブ嬢との出会いから結婚に至るまでの波乱万丈な出来事が詳細に描かれており、ノンフィクション物語としての面白さもある。非常に読みやすく、サクサクと読み進められる。楽しみながらフィリピンについて、またフィリピンパブ嬢について学ぶことができる内容である。

少し冴えない著者と、貧乏ながらも強く生きるフィリピンパブ嬢の純粋な恋物語に心惹かれる。

章の構成

  • はじめに
  • 第一章 フィリピンパブって何ですか
  • 第二章 ねえ、私と付き合ってくれる?
  • 第三章 助けなんていらない
  • 第四章 信じてほしいと言うけれど
  • 第五章 フィリピンパブ嬢のヒモになる
  • 第六章 母は絶対に会わないと言った
  • 第七章 どれだけ金があっても足りない
  • 第八章 そして彼らはいなくなった
  • 解説的なあとがき

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